文明の行方 2018 6 23

 文明というものは、一方通行ではありません。
逆戻りして、退化することもあるのです。

 タイムマシンで今から20年前に行ってみましょう。
当時は、パソコンブームで、
コンビニエンスストアに多くのパソコン雑誌が置いてありました。
「ASAHI パソコン」(中級者向け)
「PC fan」(中級者向け)
「PC USER」(中級から上級)
「日経 WinPC」(上級者向け)
「DOS/V magazine」(上級者向け)など。
 雑誌の内容は、
ハードウェアの解説から始まってソフトウェアの解説までありました。
 当時は、次々とパソコンの新製品が発売されるので、
雑誌には、CPU(中央演算装置)の解説、
メモリやハードディスクの図解、
さらに、OS(基本ソフト)の新機能の解説までありました。
そのうえ、ワードやエクセルの使い方もあったのです。
 このような内容なので、
パソコン雑誌は、専門用語の羅列のようになっていました。
それでも買う人が多かったのです。
 さて、現代に戻りましょう。
今、コンビニエンスストアにある雑誌を見ると、
娯楽の雑誌ばかりで、専門書のような雑誌はありません。
 私たちは、進化しているのか。
いや、退化しているかもしれません。
 人間の知性は退化している一方で、
コンピューターは驚異的な発達を遂げています。
 今のコンピューターと比較すると、
1990年代のコンピューターは、「子供のおもちゃ」のようなものです。
 とりわけ、2010年以降は、
コンピューターは、劇的に進化しています。
 私は、2010年2月21日に、
「コンピューターは原始時代」という文章を書いています。
 なぜ、コンピューターは原始時代であると書いたかというと、
当時のコンピューターは、「画像認識」が苦手だったのです。
いや、「画像理解」と言うべきでしょうか。
 1枚の写真の中に何が写っているか。
リンゴ、チョコレート、キャンディー・・・・・。
 人間だったら、すぐに認識できるのに、
当時のコンピューターは、このような認識が苦手だったのです。
 しかし、今のコンピューターは、「AI(人工知能)」の発達により、
「画像認識」や「画像理解」は、人間よりも優れています。
膨大な画像データであっても、すぐに認識します。
 なぜ、コンピューターは、劇的な進化を遂げたのか。
それは、GPU(Graphics Processing Unit)が、
「AI」に有効であることを発見したからです。
これは、「AI」にとって、ブレークスルーとなりました。
 GPUのようなグラフィック・チップは昔からあって、
パソコンでゲームをするために開発されたのです。
まさか、そのGPUが「AI」に有効であることを気づかなかったのです。
もちろん、NVIDIA社による改良も大きかったと思います。
 さて、GPUチップは、人類にとって「福音」になるかわかりません。
もしかすると、GPUは、人類を滅ぼす「チップ」になるかもしれません。
いずれにせよ、GPUは、「魔法のチップ」となるでしょう。
 人間の知性が退化していく一方で、
コンピューターは、次から次へと技術の壁を突破して、
加速度的に進化しています。

コンピューターは原始時代 2010 2 21

書名 石頭なコンピュータの眼を鍛える
著者 佐藤 真一  齋藤 淳  丸善ライブラリー

 「コンピューターは原始時代」と書いたので、
多くの人は、「そんな、ばかな」と思ったでしょう。
 確かに、計算機としては、パソコンですら、
一昔前のスーパーコンピューター並みの性能です。
 しかし、画像理解は、依然として、
原始時代レベルと言った方がよいでしょう。
 「いや、今のパソコンは、フォトレタッチ・ソフトで、
デジカメで取った写真を上手に加工してくれる」と反論するかもしれません。
 しかし、それは、画像処理のことで、
ここで言いたいのは、画像理解のことです。
 実は、コンピューターは、「画像理解」が苦手です。
わかりやすく言えば、コンピューターは、画像や映像の中に、
何が写っているか解析するのが、苦手です。
 人間ならば、一枚の写真の中に、何が写っているか判断するのは簡単でしょう。
たとえば、「りんご」、「チョコレート」、「テーブル」など、即座に認識するでしょう。
 しかし、こういう作業は、コンピューターにとっては、非常に困難な作業です。
コンピューターが、「りんご」を認識するのは、
形も色も、だいたい揃っていますので、比較的簡単かもしれません。
 ただし、「チョコレート」になると、難しいでしょう。
なにしろ、「チョコレート」は、形は、大きいものから小さいものまで、
四角形のものから丸いものまで、色は、茶色からクリーム色まで、
考えれば、いくらでもあります。
 子供ならば、大好きなチョコレートだから、
たとえ形や色が違っていても、即座に認識するでしょうが、
コンピューターは応用が利きませんので、大変だと思います。
 さて、こういう画像理解の分野でも、研究の成果として、
デジタルカメラの顔認識機能が一般的となりました。
最近では、笑顔を認識してシャッターを切る機能も実用化されているでしょう。
 コンピューターに画像を理解させる研究は、
人間が、大脳の中で、
画像をどう処理して理解しているのかという研究にも似ていると思います。
 こうした分野の研究は、アメリカが先行していますが、
日本は、少ない予算の割には、健闘していると言えます。
 「画像理解」という分野も、
いずれ巨大産業(ソフトウェア特許)となるかもしれませんが、
さすがに、アメリカは、未来への投資という点で、抜かりなく先行していると思います。
 日本の政治家や官僚は、未来が見えませんから(特に科学技術が弱い)、
未来の国際競争力は低下していくかもしれません。










































































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